理事長室から 理事長室から

Vol.1

ーコロナ禍に負けず314人が巣立ち「幸多き人生を」エール送るー

2022年1月に就任した篠田昭学園理事長自ら執筆した記事の掲載を開始します。

「理事長室から」と題し、青陵学園の理事長室から見える学園や地域社会の様子などについて随時、レポートの形で学内外の皆さんにお届けして参りますので、ぜひ御覧ください。

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春の訪れを実感させる好天に恵まれた3月1日、新潟青陵高校で卒業式が開かれ、314人の若者が巣立っていった。今年の卒業生はほぼ丸2年、コロナ禍の下で高校生活を送ることを余儀なくされた。「高校生活を満喫した」とは言えぬ期間が長かったと思う。それだけに、「これからの人生が幸多きものであってほしい」と祈る気持ちは切なるものがあった。私が理事長となって初めて高校生に触れる機会ともなった卒業式で、理事長として卒業生と保護者の皆さまにお贈りした祝辞を以下に掲載し、18歳の巣立ちへの餞としたい。

卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。そして、今日巣立っていく方お一人おひとりを手塩にかけてお育ていただいた保護者の皆さま、誠におめでとうございます。皆さまのこれまでのお力に改めて敬意を表し、お祝いを申し上げます。

<コロナ禍での2年間>

卒業生の皆さんは今、どんな気持ちでこの卒業式に臨んでいるでしょうか?皆さんの高校生活3年間のうち丸2年間は新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われ、「高校生活を存分に謳歌する」というわけにはいかなかったと思います。そんな中でも、皆さん方は粘り強く勉学に励まれ、スポーツ・文化などクラブ活動にもいそしんでくれました。また、先生方も「新潟で一番面倒見の良い青陵高校」の名に恥じないよう、コロナ禍の中でも工夫をして皆さんの心身の育ちを精一杯サポートしたと思っています。


<私の高校入学の思い出>


今日の卒業式で祝辞を述べるにあたって、私も自らの高校時代を振り返ってみました。私が新潟市内の高校に入学したのは1964年、昭和39年でした。この年は日本では一般的に「東京五輪の年」「日本が高度成長の坂を駆け上がる年」として位置づけられています。ただ、新潟では「新潟国体の年」であり、「その数日後に新潟地震が起きた災害の年」として記憶されています。私たち1年生は入学式の後に教室に行っても、先生方から「今は国体の準備で忙しい。6月の国体が終わるまで自主的に過ごしていろ」「2、3年生は国体のマスゲームなどの戦力だから邪魔せずに、しばらくは自分たちで高校生活に慣れていくように」などと言われ、言わば「ほったらかし状態」でした。新潟国体が6月11日に終わり、「これからが私たちの番」と思っていたら、その5日後に新潟県の粟島付近を震源とするマグニチュード7・5の大地震に見舞われ、高校生活どころか、暮らしそのものが吹っ飛んでしまいました。高校の恩師たちには後々、「お前らの年次は面倒を見てやれなくて、申し訳なかった」と言われる学年でした。しかし、ものは考えようです。そのお陰で私は、窮屈な学則やうるさい上下関係にあまり縛られることなく、「自主・自立」の生き方を高校3年間で身につけたような気がします。


<コロナ禍を「災い転じて」に>


皆さん方の高校生活3年間も同じことが言えるかもしれません。どんなにコロナを恨んでも、「なぜ自分たちの高校生活はこうだったのだろう」と嘆いても、歳月はかえってきません。これを是非「災い転じて…」にしていただきたいのです。コロナ禍により大勢の方が命を失われていますので、「災い転じて福となす」とまでは申し上げませんが、私たちはコロナ禍の中で多くのことに気づきました。東京に代表される「過密による繁栄」がいかに危ういものであるかーこのことに気づきましたし、顔と顔を合わせずとも、リモートでこんなに容易に意見交換がなされることにも気づきました。


<コロナ禍で新たな気づき>


コロナ禍を機に、世の中が大きく変わりだしています。例えば、新潟市にUターン、Iターンする企業人が増えています。スマホアプリの世界で全国的にも知られるフラー株式会社の渋谷修太会長(会長と言ってもまだ30代半ばなのですが)、渋谷会長は子ども時代を過ごした新潟市にUターンし、本社も新潟市に移してくれました。「新潟は通勤時間が短く、四季のはっきりとした自然の中で人間らしく暮らせる。子育てに向いているし、ビジネスで不利な点は何もない」と渋谷さんは話しています。コロナ禍で価値観が大きく変わってきているのです。


<世の中は大きく変化>


そんな中で皆さんは、「18歳の選択」をなさいました。皆さんは「18歳の自立度がアップする節目の1期生」ですので、その選択は従来以上に尊重されるべきでしょう。これから青陵学園でさらに学ばれる方もいるでしょうし、他での学びを選択された方もいるでしょう。社会人として巣立つ方もいらっしゃいます。この時点での選択・決断ですから、それは大切にしてもらいたいと思います。一方で、「これから学びながら、自らの進路を決めていく」という方も多いでしょうし、この時点での決定にずっと縛られる必要もないと思います。


<今の仕事の半分はなくなる!>


と言うのも、世の中の変化は今後さらに大きくなるからです。英国オックスフォード大学の調査では、「ロボットやAI(人工知能)の進化などで、今後10~20年間で今の仕事の半分はなくなるだろう」と予測しています。変化の大きい世の中で、これから皆さんは多くの人と出会い、多くの気づきを得るでしょう。世の中の変化をキャッチするアンテナをきちんと立てると共に、そんな出会い・気づきを将来に活かしていくことが重要になります。


<青陵は「あなたたちのホーム」>


新潟青陵高校で学んだ3年間の土台を活かし、これからの長い人生を充実させていただきたいと思います。生きがいを持って過ごすには家族や学ぶ場・働く場の仲間たちだけでなく、地域や社会にも求められる人であってほしいと思います。世の中がどんなに変化しても、青陵はいつまでもあなたたちの「ホーム」です。迷ったら保護者の方だけでなく、先生方や友人たちとも相談してほしいと思います。それは青陵で学んだあなたたちの当り前の権利だからです。
最後にもう一言、申し上げます。一人で大人になれる人間はおりません。あなたたちは、ご家族をはじめ多くの方に育てられて、今日を迎えているのです。この卒業式を一つの契機として、自らの18年を振り返り、これまで育てていただいた方に感謝する時間を持ってほしいと思います。それが新たな人生のスタートを切ることにもつながります。皆さんの人生が幸多きものになることを祈念して祝辞といたします。本日は、誠におめでとうございます。

以上、1日の卒業式の祝辞を紹介させていただきました。私が新潟青陵学園の理事長に就任させていただいてから2か月がたちました。これから青陵学園の理事長室から見える学園や地域社会の様子などについて随時、レポートの形で学内外の皆さんにお届けしようと思います。私の脳裏に浮かんでいるテーマや心象風景をご披露することで、新潟青陵学園の可能性や課題について皆さんからのお考えをいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

2022年3月2日
学校法人新潟青陵学園
理事長 篠田 昭