理事長室から 理事長室から

Vol.9

―青陵将来ビジョン発表会―

報告会を終わり、連携協定を結んだ相手先の代表者らも含めて、みんなで記念撮影

<理事・評議員らに改めて説明>


2040年の新潟青陵学園のあるべき姿を描く「青陵将来ビジョン」と、その裏打ちになる「青陵ミッション」は今年5月までに策定作業を終え、学園内外に周知する資料作りに入っていました。このほど資料作りが終わり、学園の学外理事や評議員ら関係者に内容を説明する「青陵ミッション・青陵将来ビジョン報告会」を8月7日に青陵ホールで開催しました。報告会には学園と連携協定を結んでいただいた組織からも出席いただき、「オール青陵」で青陵将来ビジョンの実現に向けて前進する機運を盛り上げる場にもなりました。


報告会では私が概要を報告し、木村哲夫常務理事・大学学長が「学園の進化とその役割の再定義」について、菅原陽心短大学長が「DXリテラシーと通信制を活用した教育」について説明。中村芳郎事務局次長が同窓会を強化して運動体としていく「青陵アルムナイ事業」を紹介しました。関係者との質疑応答もあり、青陵将来ビジョンについての理解を深め合いました。今後、「青陵ミッション・青陵将来ビジョン」についてできるだけ多くの方に知っていただくよう、積極的に周知に努めていきます。

<「実学教育」の拠点から、「社会変革」の基点へ>

青陵ミッション・青陵将来ビジョンについては、骨子を前回の「理事長室から」でご紹介してあるので重複を避けますが、エッセンスだけ触れさせていただきます。

青陵学園はこれまで、20年余にわたって、建学の精神である「現今の社会に適応すべき実学の教授」に励んできました。これから学園は2040年に向かって「ソーシャルイノベーション(社会変革・地域変革)の拠点、さらにスクエア(広場)へ」と大きく翼を広げていきます。その社会変革の活動は新潟と世界を循環するものになるでしょう。

また、青陵将来ビジョンを実現するための学園の使命(ミッション)として、青陵での学びや実践では「多様な価値観を触れ合わせ、インクルーシブな機会を提供する」ことが必須と考えます。多様な価値を許容し寛容性を持って学んでいくには、「品格や知性、徳性を持つ」ことが求められ、その土台の上に、青陵が長く追い求めてきた「実践的・実学的な生きる力・学ぶ力」の発展が可能となると考えています。

<青陵将来ビジョン作成の背景>

青陵ミッションと青陵将来ビジョンの説明図をバックに、説明をさせていただきました

報告会ではまず、「青陵将来ビジョン」を作成した背景・理由から説明しました。第一は「厳しい少子化」です。それもコロナ禍で加速し、昨年の出生数は国の予測をはるかに下回り、80万人台割れとなっています。「従来延長線上では生き残れない」ことは明白です。2点目は青陵学園固有の問題点かもしれませんが、「学園の一体化した取り組みが不十分」という点にあります。2021年度に「青陵学園ブランド戦略」を策定した最大の理由がこの点にあり、今後、「学園総体で取り組みを構築しなければ生き残れない」ことも間違いありません。3点目は「新体制の発足」です。2021年度中に理事長、常務理事・大学学長、短大学長が新任者になり、2022年度明けで高校長、幼稚園長も交代しました。体制一新した今こそ青陵の将来を展望するビジョンを描く時であり、「この好機を逃したら生き残れない、ラストチャンスである」と考えました。また昨春、「青陵学園を持続可能にする土台を2022年度内に築く」との理事長ミッションを発出しましたが、その土台を築くためには「目の前の改革」を遂行すると同時に「青陵ミッションと将来のビジョン」を自らで描くことが必要とも考えました。

<青陵将来ビジョン策定の狙い>


次に青陵将来ビジョン策定の狙いについてです。理事長として、学園が持続可能になっていくために最も重要なことは「学園総体で取り組む姿勢の明確化」と考えています。「青陵ブランド戦略」策定で培われつつある「学園一体で取り組む」姿勢をさらに確かなものにし、定着化を図っていくことが何より大切です。この機運を盛り上げるため、ビジョン策定のプロジェクトチーム(PT)については大学・短大・高校・幼稚園の教職員でチームを編成したブランド戦略PTメンバーに再度活躍してもらうことにしました。

また、「2040年、青陵はこうあっていたい」とのビジョンを我が事として捉えることができる年代は、やはり40代半ば以下ではないでしょうか。この点でも青陵ブランド策定PTメンバーはほぼ条件に合っていました。中堅・若手中心のPTメンバーとすることで、従来発想とは異なる議論を期待しましたし、このことが教職員の意識改革につながるとも考えました。一方で「策定本部メンバー」には学内理事を中心に、学園経営に責任を持てる者に絞り込みました。策定本部がPTに常に伴走することで、「議論だけではなく、学園として実践をしていく」ことを保証したつもりです。

さらに2025年から3度の「中期計画(5か年)」を経て「青陵将来ビジョン」の実現年とする形を取ったことで、「目の前の改革」「喫緊の課題」から目をそらさず議論してもらうことを必須として捉えていただくようにしました。

<青陵将来ビジョン策定過程での成果>


ありがたいことに青陵将来ビジョン作成の過程でもいくつかの成果・効果が出てきました。まずは「学園は一体」との意識の醸成です。残念ながら定員割れが続いている青陵高校の今後を考える「改革チーム」には高校教職員を主体としつつも、大学・短大・職員チームを合わせると高校のメンバー数を上回るようにし、「学園の総力戦」であることを印象付けました。学園全体で高校改革を推進していく姿勢を明確化したことで高校の教職員の意識が変わり、多くの教職員が積極的に改革案を考えてくれました。

2点目は「通信制」に対する偏見の払しょくです。近年、急速に生徒数を伸ばしている私立の広域通信制高校に違和感を持つ教職員が当初は多かったようですが、青陵将来ビジョン策定の議論の中で通信制への認識が大きく変化しました。今は、高校・短大改革の大きな柱として「通信制併置」を前提に考えています。また、「ソーシャルイノベーション(社会・地域変革)」との用語への違和感も薄れつつあります。学園が建学の精神である「実学の教授」から、「変革の実践」への拠点になっていくことが学園の共通認識へと進化し、学園の進む方向が明確化してきた手応えをつかんでいます。この延長線上に2025年度、「ソーシャルイノベーションセンター」を設置し、地域課題・社会課題を解決できる「人材の育成」と「課題解決の実践」に取り組んでいきます。

さらにありがたいことは、「地域との協働」が標準装備になってきたことです。「何に取り組むにせよ、学園単体での力には限りがある」「地域や民間団体・企業、行政と組むことで可能性が大きく広がる」との認識が共有されるようになったことも、青陵将来ビジョン策定の議論が生んだ大きな成果と捉えています。


<「青陵プロミス」の狙いと効果>


手前みそになりますが、青陵将来ビジョン策定作業が終盤を迎えた3月、「青陵プロミス~地域とのお約束」を理事長として教職員に明示したことも効果があったと考えています。これは青陵将来ビジョン策定議論の中で、「広域通信制」や「ソーシャルイノベーション」などの言葉が飛び交ううち、「青陵は地域から、新潟から遊離していくのでは‥」との疑念や不安が策定本部メンバーらに広がっていく「空気感」から作成を考えました。「学園が将来どんなに姿を変えていっても、地域から支持されていなければビジョンの成功はない」との考えの下、疑念・不安の早期払拭のために作成したものが「青陵プロミス~地域とのお約束」です。

「青陵プロミス」は「県民・地域から支持され、求められる青陵学園」を目指すもので、「青陵が地域にあってよかった!新潟にあってよかった!」と言われる活動を全学教職員に求めるものです。4分野に分けて具体的な取り組みを挙げてありますが、これは「理事長室からvol.8―「ビジョン」と「プロミス」―」 「理事長の青空リポート」で以前報告したので繰り返しません。

<具体的な「協働」もスタート>


青陵プロミスで例示した取り組みが「協働」の形で具体的に始まっています。例えば青陵学園が立地する新潟西海岸での「月見草を育てる運動」や学園周辺の松林と浜辺をきれいにする「青陵の森と浜辺リンク運動」、ダンスで新潟の子どもたちを元気にする運動、首都圏の関東学院大と組んで新潟へのUIターンを進める運動などが地元自治会・コミ協、民間団体、企業チームなどとの協働で始まっています。

各種団体との協働を強力かつ持続的に行うため「包括連携協定」の締結も以下のように相次いで行われています。

・広域通信制である「さくら国際高校」の新潟キャンパスを運営する一般社団法人TKMとの協定を締結(3月)=併置を検討している広域通信制のノウハウ、特に登校困難・就学困難生徒への対応についての学習・研修

・世界的に活躍しているダンスカンパニー「DANCE PRESENTATION UNITY」との協定(6月)=市内小中学校へのチビユニティの派遣・ワークショップの実施など

・海岸清掃や子ども食堂、学校支援などで実績のある一般社団法人Smile storyとの協定(6月)=青陵の森と浜辺リンク運動など

・木山産業株式会社NINNO事業部との協定(7月)=NINNOチームと組んでのDX人材の育成など

・新潟からの学生が多くUターン率も高い関東学院大学との協定(7月)=人材育成の相互支援や新潟へのUIターン推進など

協定調印書を前に置き記念撮影(左から菅原青陵短大学長、木村青陵学園常務理事・大学長、小山嚴也関東学院大学長、篠田青陵学園理事長)

<「青陵将来ビジョン」の今後>


「青陵将来ビジョン」は、「超少子化時代にあっても、『揺るぎない青陵学園』をつくる」ためのもので、そのためには「将来を展望し、確かなビジョンを持つ」ことが必要―との認識をまず全教職員が共有することが第一歩となります。

今後、青陵将来ビジョンを地域の方、学園外の方にも広く知ってもらいつつ、多方面での実践活動を展開しながら青陵ビジョンへの理解者や青陵ファンを増やしていきます。そのためには「青陵プロミス」に沿った実践活動を地域・民間団体・企業・行政などの皆さん方と共に、多様、かつパワフルに実践していくことが重要になります。

             ―青陵学園は「地域とのお約束」を大切にし、

            「青陵将来ビジョン」を胸に刻んで前進していきます―

今後も叱咤激励をよろしくお願いいたします。

2023年8月10日
新潟青陵学園理事長 篠田 昭