Vol.10
―いよいよ「改革の秋」―
<9月の評議員会・理事会での報告>早いもので今年度も上半期が終わろうとしています。9月21日に開いた学園の評議員会・理事会で上半期の取り組みや改革の到達点などについて、説明いたしました。どのような点に触れたか、今回の「理事長室から」で報告させていただきます。
学園では今年5月までに2040年の青陵のあるべき姿を描いた「青陵将来ビジョン」と、それに伴う「青陵ミッション」を確定させ、8月7日に「青陵将来ビジョン発表・報告会」を開催。評議員・学外理事の皆さまにもご案内を差し上げました。しかし、ご都合があって出席いただけなかった方もいらっしゃいましたので、簡単に将来ビジョンの方向性などを文末の【メモ】にてご説明します。
<厳しさ増す「少子化の奔流」>
今回、「将来ビジョン」の内容以上にお伝えしたかったのが、「ビジョン策定の背景」であり、ビジョン発表会以降の「到達点」でした。
ビジョン策定の背景として最も大きなものは「厳しい少子化の流れ」です。昨年の日本の出生数は77万人を辛うじて超えるレベルまで落ち込みました。コロナ禍により少子化が急加速していることは明らかです。また、文科省がこれまで示してきた「少子化が全国の学園に与える影響」も、文科省の予測を超える深刻な状況になっていることが明らかになってきました。8月末には、全国の私大600校のうち定員割れは320校(前年比37校増)で、「初めて5割を超え、53.3%となった」ことが日本私立学校振興・共済事業団の調査で判明しました。私立短大は276校のうち定員割れが92%となり、残念ながら青陵短大もその中に含まれてしまいました。また、9月の地元紙報道では、「県内私立大学14校中10校が定員割れ」だそうです。今回、久しぶりに定員を満たしたある私大は「女子サッカー部を新設した」ことが〝復活〟の要因のようです。これらの事実は「学園は従来延長線上の取り組みでは生き残れない」ことを示しています。
<生き残りのラストチャンス>
この大状況下で青陵学園は「将来ビジョン策定」の作業に入った訳ですが、学園特有の事情もいくつかありました。一つは「学園の一体化」に遅れがあったことです。幼稚園―高校―短大―大学―大学院から成る青陵学園ですが、個々の組織として「精いっぱい努力してきた」のかもしれませんが、「学園の総力を挙げて存在感を示す取り組み」は不十分だったと言わざるを得ません。これについては先代理事長の指示で「青陵学園ブランド戦略を構築する」取り組みが2021年度から始まり、この土台があったから「将来ビジョン」策定作業をスムーズに始めることができました。今後も「学園総体での取り組みを構築しなければ生き残れない」ことは明白と思います。
また、先代理事長・短大学長、常務理事が一昨年、相次いで逝去されたことで学園の人事を一新せざるを得ず、それに加えて高等学校長、幼稚園長も昨年4月に新任者が着任しました。大変に厳しい試練の時期でしたが、逆に言えば「体制一新の今こそ、青陵の将来を展望するビジョンを描く時」とも言えましょう。今回の将来ビジョン作成は「この好機を逃したら生き残れない、ラストチャンス」でもあります。そんな問題意識を持って昨春、「2022青陵ミッション」を理事長として発出しました。その根幹は「青陵学園を持続可能にする土台を2022年度内に築く」ことであり、「目の前の改革」を遂行しつつ「青陵将来ビジョンを描く」ことを自らに課したわけです。将来ビジョンの確定は年度明けにずれ込みましたが、まず、「持続可能にする土台は築けたかな」と自認しております。
<現在の状況・到達点>
青陵は「改革のスタート地点に立った」と言っても、高校の定員割れの状況などを見ると、そのスタートは残念ながら「10~15年遅れ」であることを認識しておくことが必要と思います。一方で、「将来ビジョンは国の改革と方向性が一致・もしくは先取りしている」ことは自負しても良いと思います。大学も含め入学状況はさらに厳しさを増していくわけですから、入学者を増やす努力を徹底する必要があります。特に今年度から定員割れした短大については定員割れ抑止に全力を挙げていきます。
<「通信制教育」に大きく前進>
一方で、既にスタートさせた高校・短大の改革チームは精力的に議論を重ね、改革の具体方向を打ち出してくれました。「2026年度、両組織に広域通信制併置を目指す」との方向性を明確化。IT・DXに強い大手企業とパートナーシップを結ぶ方向で、今春から定期的にリモート会議を積み重ねてきました。「AIなども駆使する一方で、徹底的に面倒見の良い通信制教育を構築する」との志を共有し、本格提携に向けて着実に話し合いを続けた結果、この度「業務提携協定」調印に漕ぎつけました。デジタル分野にそれほど強くない青陵学園にとって、誰もが社名を知っている有名企業との提携は心強いものがあります。業務提携を基に、高校では10月から学校関係者や保護者らを対象とする「ニーズ調査」を実施すると共に、県などと本格協議に入っていきます。連携企業とは今後さらに提携を密にし、通信制教育を共同運営するレベルまでパートナーシップを高めていきます。
<「青陵高校は生まれ変わります」宣言>
改革は「通信制併置」以外でも前進しています。高校改革チームは改革案をまとめ7月末に答申(報告書)してくれました。柱は「全日制の改革」と「広域通信制併置へ」の2つです。これを基に改革タスクフォースチームを設置。「青陵高校は生まれ変わります」との宣言を発出しつつ、改革の実践に入ります。また、短大改革チームは新潟駅南のプラーカに入居しているIT企業チームで「新潟イノベーション」を意味するNINNOチームと共同でDX人材を育成すべくカリキュラムの強化に入っています。
<比サンカルロス大学とも連携協定>
青陵学園は「学園単体でできることは限りがある」との認識の下、各種団体・組織と相次いで包括連携協定を結んできました。これまでも紹介してきたので、あまり繰り返しませんが、一般社団法人TKM(通信制教育)、DANCE PRESENTATION UNITY(ダンスのワークショップ・コーディネート)、一般社団法人Smile Story(松林や海岸クリーン作戦など)、木山産業株式会社NINNO事業部(DX人材の育成)、関東学院大学(学生相互の学び合い・新潟へのUIターン)との連携を7月までに終え、ブログ「青空リポート」で報告したように9月にはフィリピン・セブ島に立地するサンカルロス大学とも包括連携協定を締結しました。ここに(まだ名前を明らかにできませんが)大手IT関連企業との業務提携協定が加わったわけです。今後も必要な連携を拡充していきます。
<地域との協働・アルムナイも始動>コロナ禍で休止・停滞せざるを得なかった地域との協働事業を復活させ、新たな事業の始動にも取り組みました。これも報告済みですので簡単に再録すると、青陵が立地する西海岸に月見草を増やす「月見草プロジェクト」や、学園周辺の松林・海岸を整備する「青陵の森・浜辺リンク作戦」、市内小中学校へチビユニティのパフォーマンスを出前コーディネートする事業を開始しました。
また、同窓会のレベルを超えて、学園卒業生・教職員OB・OG、協定団体などがパートナーシップの絆を強くして活動する「アルムナイ運動」も始動しました。9月21日にはキックオフ・イベントとして、スパイス料理研究家の一条もん子さん(青陵短大卒)、居酒屋甲子園で優勝し銀座などに出店している燕三条Bitのオーナーシェフの秋山武士さん、全国青年農業者代表でG7農相会合などで新潟の農業をプレゼンした大越農園の大越正章さん(共に青陵高校卒)の3人がスペシャルトーク。「青陵アルムナイが創る『食』王国新潟」をテーマにしたパネルディスカッションは予想以上に盛り上がりました。今後も機会を捉えては「アルムナイ運動」の活性化に努めます。
<「教職協働」に人事体制を強化>
これまで学園では大学の設置や短大の充実などを実現してきましたが、そこは先代理事長の強いリーダーシップの下、教員チームが大きな働きをしてくれたと思います。これは他の学園と比べても当学園の優位性と言っても良いでしょう。それに比べると職員チームは50代以上が手薄で栗林克礼事務局長・大学事務部長の負担が大きく、陣容の広がり・深さとも、やや力不足と評価せざるを得ない状況でした。改革を本格的に推進していくには「職員力のアップ」が急務であると判断。新年度に60歳前後の人材を補強しました。事務局次長に中村芳郎・前内野小学校長、総務課長に樋口健志・前新潟市危機管理防災局長・危機管理監、そして役員補佐としてホテルマンの経験が長い國谷洋さんを招聘しました。そして、改革がいよいよ本格化する今秋、体制をさらに強化しました。中村次長を統括次長とし、樋口総務課長は課長兼任のまま次長職にし、沼幸夫事務局次長・短大事務部長と併せ「3人次長制」を取ることにしました。これで、「教職協働の土台」が整いました。若手課長らも次長と相談しながら通常・改革の両業務に一段と手腕を振るってもらえると思います。
<元甲子園大学長を「学事顧問」に>
さらに10月からは佐久間春夫・元甲子園大学長から学園の「学事顧問」に就任いただきます。佐久間さんは新潟市のご出身です。都立大・国士館大・奈良女子大などでキャリアを積み、立命館大では学生部長などを歴任。この3月末まで兵庫の甲子園大学で学長を務められた方で、大学をはじめ高校から幼稚園まで学園業務に精通されています。青陵改革が本格化するこの秋から、実践的なアドバイスに期待しています。
また、ほかにも新潟市教委の「スクール・ロイヤー」としての実績のある方に青陵学園のスクール・ロイヤーを委嘱し、SSW(スクール・ソーシャル・ワーカー)や特別支援教育専門員も10月から配置します。青陵は、より的確で、より面倒見の良い教育を幼稚園から大学院まで充実させていきます。
青陵学園はいよいよ「改革の秋・勝負の秋」を迎えます。これからも、ご助言・ご支援をよろしくお願いいたします。
2023年9月29日
新潟青陵学園理事長 篠田 昭