理事長室から 理事長室から

Vol.13

―「変革の拠点」立ち上げへ―

「地域から求められる青陵」を創る「ソーシャルイノベーションセンター」

<「将来ビジョン」に向けて>
 新潟青陵学園では昨年、2040年ごろの学園像を想定した「青陵将来ビジョン」と「青陵ミッション」を作成しました。ビジョンの中で将来の目指す姿を「人と社会がともに奏でるソーシャルイノベーションのスクエア。」と規定しています。「ソーシャルイノベーション」とはまだ耳慣れない言葉かもしれませんが、「実学」を旨とする青陵が目指すイノベーションは、「新たな価値の創造」など、あまり高邁なものではなく、「身近な地域課題・社会課題の解決」という風に捉えています。そこに広場といった意味の「スクエア」を加えたことで、学園だけで課題解決を目指すのではなく、地域や企業、自治体などと一緒に課題を解決したり、課題解決を目指す人材を育成したりする「出会いと、育ちの広場」をイメージしています。

ビジョンではその推進力として、2025年度に「ソーシャルイノベーションセンター(SIC)を開設する」と定めており、準備する時間的余裕はそれほどありません。昨年秋からソーシャルイノベーションについての学内勉強会を始め、これまでに新川達郎・日本ソーシャルイノベーション学会代表理事から政治学的切り口で、大室悦賀・長野県立大学教授からはビジネス・経済面からのご講演をいただきました。3回目は前回の「理事長室から」でご紹介したように、宮城(みやしろ)孝・法政大教授から「福祉や災害時のレジリエンス」の角度から講演をいただきました。ソーシャルイノベーションについての学内勉強会はこれで終了し、「2040ビジョン推進本部」として、今後はSIC検討チームを立ち上げて方向を詰めていただくことにしました。

青陵ホールで開催したSIC検討チームの立ち上げ・結成式

<「検討チーム」の立ち上げ>
ビジョン推進本部が諮問する事項としては「青陵らしいイノベーションとはどういうものか?」をメインテーマとし、①これまで学園が手掛けてきた、あるいは取り組もうとしたソーシャルイノベーションの事例整理、②これまでご講演いただいた3人の先生による講演の内容整理、③昨年、コロナ禍が収まった後、学園が地域や団体と取り組んだ松林・浜辺整備や月見草再生プロジェクトなどの成果分析―などを踏まえ、「既存のボランティアセンターや社会連携センターなどとの関係性はどう整理すべきか?」についても方向性を出していただければ、と期待しています。SIC検討チームには今秋を目途に答申をいただきたいと思っています。
このほど人選などが整ったので3月21日、大学教員6人、短大教員3人、高校教員3人、学園職員3人から成る「ソーシャルイノベーションセンター(SIC)検討チーム」の立ち上げ・結成式を青陵ホールで行いました。

式には検討チームメンバーと木村大学学長、菅原短大学長らが参加。まず、中村統括次長が検討チーム設置の目的と諮問内容などを説明。「これから半年間を目途に集中的に議論し、ビジョン推進本部に答申をいただきたい。答申後には学園内に『SIC設置準備室』を開設し、答申内容を踏まえて25年度のSIC設置へ準備を進めていく」「将来ビジョンにも盛られているSIC研究科の設置検討は、このチームとは別途行うことになる」などと語りました。

SIC検討チームの結成式で挨拶させてもらいました
SIC検討チームのリーダーとなり、挨拶される三浦修教授

次いで挨拶した私は、「青陵学園がSICを設置して身近な課題解決や人材育成に乗り出すことで、地域や社会から『やはり青陵学園は大事な存在だ』『青陵と一緒に少しでも多くの改題解決をやっていこう』と思われるような青陵学園をつくっていこう」などと話させていただきました。また、SIC検討チームのまとめ役(リーダー)となる三浦修・大学社会福祉学科教授は、「間」の大切さを語られました。「私は、教育と研究の『間』とか、生徒・学生と先生の『間』のような、『間』を創り出すことがSICの重要な役割の一つと思っている。1年後、しっかりとSICが開設され、学園全体がイノベーティブなものになり、高校生・学生・教職員が一緒になって課題解決に活動できるよう、議論をしていきたい」とのお話でした。
私も新聞記者時代に記事を書く時、「際(きわ)」を意識したことがありました。「政治部と経済部の『際』とか、政治部と社会部の『際』にこそ、様々な社会課題が落ち込んだり、埋もれたりしている」と思ったからです。「間」とか、「際」に光を当てて、社会・地域課題を見つけ出し、解決に努める青陵学園を目指していきたいと思います。

2024年3月22日
新潟青陵学園理事長 篠田 昭