理事長室から 理事長室から

Vol.16

―「地域課題をみんなで解決」の拠点に―

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―「青陵ソーシャルイノベーション推進機構」を開設―

<学園全体で取り組みます>
新潟青陵学園では地域課題・社会課題の解決を図る「ソーシャルイノベーション」のスクエア(広場)になることを目指して、歩を進めています。それは、さまざまな地域課題のご相談に応ずる総合相談窓口でもあり、具体的なプロジェクトの選定やチーム編成にも当たる学園内の司令塔的部署でもあります。この組織を新年度に開設することは先月の「理事長室から」でもご報告いたしました。名称はこれまで「ソーシャルイノベーションセンター」(仮称)としてきましたが、組織名を「青陵ソーシャルイノベーション(SSI)推進機構」とすることを先月下旬の学園理事会にご報告し、ご承認をいただきました。「推進機構」とはやや大げさな印象もありますが、学園全体で力強く取り組んでいく―との意気込みを込めたつもりです。
今春には学園内に「SSI推進機構」を開設。総合相談窓口を機能させると共に、今年度前半の「重点プロジェクト」を決め、関係地域・団体と一体となって地域課題の解決に向け取り組んでいきます。開設後はさまざまな「困りごと」(地域課題)のご相談をお寄せください。

<「SSI推進機構」開設の目的>
ここでもう一度、SSI推進機構を本学園が開設する目的・狙いについて整理しておきます。
これまで青陵大学・短期大学部は「地域にある高等教育機関」として、主に地域の若者を地域で育て、地域に人材としてお返しすることで地域への役割を果たしてきました。これは高校も同様ですし、幼稚園も子どもたちの健全な育ちを支えてきました。学園全体として、「地域の学びの場・育ちの場」としての役割を果たし、地域に貢献してきたと自負しています。
近年は少子化の流れが激しくなり、本学園でも高校・短大などは定員割れが大きな問題となっています。青陵の存在感を高めるためにも新たな役割を担うことが必要と考え、「青陵が地域にあって良かった! 新潟にあって良かった!」と感じていただく活動を強化することを「青陵プロミス~地域へのお約束」として打ち出しました。その大きな方向が「地域課題・社会課題の解決に役立つソーシャルイノベーション(SI)のスクエアになる」ことです。新年度に「SSI推進機構」を開設するのは、そのための大きな一歩になります。

<青陵の総合力を発揮する契機に>
これまでも本学園ではさまざまな地域課題に地域の方と取り組み、一定の成果を挙げてきました。大学・短大の「社会連携センター」や「ボランティアセンター」はそのけん引役として大きな力を発揮してきたと思います。また、個々の研究者として地域と組んでの取り組みも多彩なものがありましたし、高校の「探究の時間」の活動などでも注目される取り組みは少なくなかったと思います。
今回の「SSI推進機構」の開設は、これまでの取り組みを青陵学園総体でまとめ、よりパワーアップするものです。この機会に社会連携センターもボランティアセンターも学園全体のセンターに改組しますし、高校の探究活動に大学、短大の研究者や学生が加わることで、より大きな可能性を引き出そうとするものです。学園総体として取り組むことで発信力も高まりますし、学園内の絆も強くなります。その力を「さらなる対応力・実践力アップ」につなげていきます。

<地域の「総合相談窓口」に>
地域の方や団体・企業の方には「SSI推進機構」の相談窓口に来ていただけば「ワンストップ」で各種相談に対応できるようにしていきます。当面はボランティアセンターや社会連携センターへの相談も従来通り受け付けますが、学園内で情報を共有し、相談に対し「オール青陵で、最善の対応」を提案できるようにしていきます。このことで「青陵が地域にあって良かった!」と思っていただく事例を増やし、青陵学園の存在感を増していくことも目指していきます。

<生成AIの力も活用>
地域のさまざまな相談ごとに対応していくには相当な情報量が必要です。そこで本学園は新潟日報生成AI研究所とタッグを組むことを考えています。先月27日には同研究所の石山洸所長から本学園でご講演いただきました。その際、「SSI推進機構」の計画についても説明し、相談窓口での生成AI対応について可能性を伺いました。答えは「顧客ニーズに応えるのが私たちの仕事」との力強いお言葉でした。

そのことも参考にして、「SSI推進機構」の目指す方向・役割をできるだけ分かりやすくお示しできるよう、Q&A方式の説明文を書いてみました。まだ、確定していない部分、夢で終わるかもしれない部分があることもご承知いただいた上でお読みいただければ幸いです。できるだけ多くの方からのご相談に対応し、〝無駄足〟に終わることを少なくしていこうと思います。今後とも「青陵ソーシャルイノベーション(SSI)推進機構」にご注目いただくよう、よろしくお願いいたします。

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◆「青陵ソーシャルイノベーション推進機構」とは◆
Q,青陵ソーシャルイノベーション推進機構(SSI推進機構)って一体何なんですか?
新潟青陵学園が「地域と共にある」ことを広く実感してもらえるよう、新しく設立する組織です。本学園が「社会的な課題」や「身近な地域課題・問題」の解決の先頭に立つことを示す「オール青陵」の活動を推進する組織であり、皆さまからは「総合相談窓口」とお考えください。
具体的にはSSI推進機構が学内外の総合相談窓口となり、「ご近所の困りごと」的な相談から、学内外の研究者らが解明に取り組む「世界的な社会課題」までを整理して、チームを編成します。学園として特に重要と認識したテーマについては毎年、半期ごとに定める「SSI重点プロジェクト」に入れさせていただきます。重点プロジェクトでは地域・NPO・企業・自治体などと連携して課題解決に取り組む「重点プロジェクトチーム」を編成し、ソーシャルイノベーションを実践していきます。また、新潟に立地する教育機関として地域課題の解決に役立つ人材を育成すると共に、研究的な視点を入れて「課題解決が社会に広がる仕組み」を提起し、社会実装化されていくよう努めていく組織です。SSI推進機構は、その全体を統括する、言わば「司令塔」です。推進機構責任者には学園理事長が就き、その任に当たることで「オール青陵」の力を結集していきます。

Q,もう少し具体的に。
地域から寄せられるご相談については、青陵大学・短期大学部1号館にある図書館の窓口に相談応答の生成AI機器「答えるもん」(仮称です)を配置し、一時対応いたします。
「答えるもん」は新潟日報生成AI研究所のノウハウを借り、青陵学園の情報が入ったソフトウエアをインストールした端末のことです。同研究所が開発した新潟日報15年分の情報が集積されていると共に、青陵学園の大学院からこども園まで各校種の教職員・卒業生などの「得意技」(シーズ集)がインプットされています。
学園に設置された「答えるもん」にご自身の相談ごとを入力いただくと、相談に来られた方のテーマ・分野がSSIで対応できそうな時は、「答えるもん」が「面談の相談に進んでください」と案内します。この場合はSSI相談員が引継ぎ、対面相談をさせていただいた上で、その分野で得意技を持つ教職員らにつないでいきます。そして学外の協力も含めてご相談に対応する「実践チーム」を立ち上げます。地域の方の相談から「SSI重点プロジェクト」が生まれることを期待しています。
また、SSIでは残念ながら対応できない分野のご相談の場合は新潟日報で集積したデータから過去の事例をチェックし、対応できそうな団体や窓口を紹介するか、類似事例の取り組みデータを引き出すことができるようにしていきます。
このようなシステムを2025年度中に構築していくことを目指しますが、開設当初は相談内容をSSI相談員が聞き取り、情報を学内で共有して対応できそう、あるいは対応したい人材が学内にいるかをチェックして、相談者に後日ご連絡します。
SSI推進機構では今後、青陵学園と連携協定を結んでいるNPO・自治体・団体・企業などを含めた「青陵アルムナイ(オール青陵)」の得意分野情報などを随時追加し、できる限り多くのご相談に実質対応できるよう、SSI機能を充実していきます。

Q,料金は取られるの?
ご相談は生成「答えるもん」のご利用を含めて基本的に無料を考えています。実際にSSI事業に取り組む場合は、相談テーマによっては料金が発生することがあります。例えば「このイベントを青陵の学生・生徒・児童で盛り上げてくれないか」などの相談では、「社会的に有益でSSIでやる意味がある」と判断した場合、まったく無料でやらせていただくこともあれば、交通費をいただく場合、誘客で相談者がかなり受益者になる場合は出演料をいただく場合―など、さまざまなケースが考えられ、「相談ごと」になります。
また、「ご近所の困りごと」相談でも、その事例によってSSIでプランを立てさせていただき、ご相談させていただきながら実践に入っていきます。「社会変革に役立つ」ケースや「地域課題の先行事例として実績を挙げれば他地域にも波及していく効果が考えられる」ケースなどは積極的に対応していきます。この場合、青陵学園の研究費の活用も考えられます。
団体・企業・自治体が事業予算を組まれ、「参画を青陵に呼び掛けられる場合」もあれば、チームを組んで補助事業に手を挙げる場合、科研費など外部の研究費に応募する場合もあるかもしれません。SSI事業を協働することで連携協定を結び、「絆」を強くして持続的に協働していくことも大歓迎です。
どのケースも事前にしっかりと協議し、必要な場合は契約書を取り交わし、事後のトラブルなどが起きないように取り組んでいきます。

Q,SSI事業は単年度の取り組みになるのですか?
一度きりや単年度での取り組みになるケースもあれば、かなり息の長い取り組みになるケースもあります。例えば「青陵の森整備プロジェクト」は、青陵学園周辺の松林がなかなか手入れが行き届かない上、外からの目が届かず安全面でも心配な状態になっていたエリアを対象にしました。まずは学生たちの安心・安全を確保しようと管理者の新潟市に呼び掛けて「目隠し状態」になっていた垣根を市から整備いただいた上で、複数のNPO団体が枝打ち・伐採などを行い、青陵の学生が清掃作業に当たる協働事業を行い、「気持ちよく散策できて、遊んでも楽しい空間」をつくりつつあります。このような取り組みはかなり息の長いものになります。

青陵学園が先進的なリーダーや地域の方と取り組んできた「月見草プロジェクト」は10年以上続いており、新潟海岸を彩っていた月見草(オオマツヨイグサ)復活に効果を挙げてきました。学園で実施する「月見草を楽しむ会」には地域の方や外国人・在外公館の方も参加いただく親睦の場ともなっています。

Q,既に取り組んでいる事業では、ほかにどんなものがあるのですか?
現在は青陵大学・短期大学部の組織である「ボランティアセンター」では2011年に発生した東日本大震災への支援を長くやらせていただき、昨年の能登半島地震にも復旧支援に赴いています。国の「少年自然の家」活動にも毎年参加しています。同じく大学・短大に設置している「社会連携センター」では教員が講師役になる公開講座を定期的に開催しています。学外にも討って出、新潟日報メディアシップで「サイエンスカフェ」を開催し、同社が主導する「鮭プロジェクト」(学生・若者のU・Iターン事業)にも積極的に協働しています。
また、連携協定を結んでいる首都圏の実践女子学園や関東学院大学には新潟出身者に新潟情報を届け、U・Iターンを促す取り組みも開始しました。さらに地域のコミュニティ協議会や新潟県立大学との協働事業である「そらいろ子ども食堂」も地域に根付いています。世界的に活躍しているダンス団体「チビユニティ」を市内の小中学校に派遣するダンス事業をプロデュースしています。チビユニティが特別支援学級の子どもたちにダンスを指導し、その効果を学園の教員が実証する事業や、聖籠町役場と協働する「子育て支援」も開始しました。
青陵高校では海岸清掃事業に取り組んでいるほか、「探究の時間」で地域との関係を深めていますし、青陵幼稚園では地域の小学校・保育園との連携事業などに取り組んでいます。
ただ、これまでは校種ごとの取り組みが多かったのですが、今後はSSI推進機構の下、「オール青陵」で地域課題の解決や活性化・安心な暮らしの支援などに取り組んでいきます。これまでボランティアセンターや社会連携センター、あるいは高校にご相談いただいていた方は、その連絡先のままで結構です。学園内で情報を共有し、よりパワーアップして対応していきます。

Q,とかく、「大学などの教育機関は敷居が高い」と言われます。「相談していいんだろうか?」との気持ちの人がまだ多いのではないでしょうか。
日本では少子化の時代に入り、全国の短大はかなり前から定員割れが広がり、その波が今、大学にも押し寄せています。青陵大学は定員を超えていますが、県内でも8割以上の大学が定員割れしており、特に地方では今後さらに厳しさを増していきます。そんな中で青陵は、「青陵が地域にあって良かった! 新潟にあって良かった!」と思っていただくよう最大限努めていく覚悟を定めました。SSI推進機構は、より多くの方に「そう思っていただくため」開設した組織ですので、遠慮なくご相談ください。できるテーマ・分野は自前、あるいは他組織との協働で取り組みますし、できない分野についてもできる限り他組織につなげる役割を果たしていきます。SSI推進機構を遠慮なくご活用ください。

2025年2月5日
新潟青陵学園理事長 篠田 昭